イチローの珍しい弱音
イチローの弱音は、個人の不振からでなくチームの問題についてだったんですね。とはいえ、彼の常に自信に満ち溢れている言動は、たゆまぬ努力から生まれたのだろうと感心させられます。鼻につく嫌な奴なんて思った時期もありましたけど、今では大好きな偉人になってしまいました。
『参照記事』
【シアトル10日=丹羽政善】デトロイトからシアトルへ当日移動。
夕方5時半頃、シアトル・タコマ国際空港に着いた。そこから車をピックアップし、セーフコ・フィールドまでは30分。ただ、試合開始が近いので、球場付近の渋滞を覚悟した。
しかし、である。空港の駐車場から球場の駐車場まで、実質30分もかからなかった。一度も渋滞にはまらなかったのである。
試合開始直前、プレス席に入ってその理由を知る。なんと、観客席がガラガラだった。
2週間前のエンゼルス戦は、3試合中2試合で売り切れを記録し、3日間で約13万6000人を集めた。
この日、まだプレーオフの可能性が残っているにも関わらず、観客数は3万人を切って2万6698人。さすがのイチローも、少し落ち込んだ。
「しょうがないよね。これだけ負けて(帰って)来たんだから。練習の雰囲気もつらかったねえ。終わってんのかなぁ、ちょっと思いました」
試合開始前、ヤンキースとの差は5ゲーム。すでにファンは、直接対決のないその差にジャッジを下したのか。
イチローは、「しんどいですけど、10連勝する可能性だってあるわけですから」と話したが、どこかむなしく響く。
プレーオフ進出ラインを93勝とする。ヤンキースは残り19試合だから、12勝すればそこに到達。残り18試合のタイガースは15勝。しかし、残りが20試合となったマリナーズは、18勝しなければそこに届かない。負けられるのは、あと2つ。
仮に、当確ラインが90勝に下がったとしても、マリナーズは15勝5敗で残り試合を駆け抜けなければならない。その場合、ヤンキースは9勝10敗でいい。
9回表、アスレチックスがこの日2本目の満塁ホームランを放つと、残っていたほとんどのファンが席を立った。
彼らは現実を目の当たりにしたのかもしれない。
最終回、イチローは三振をしたが、ベンチに戻る時、いつもの様に胸を張った。しかし、その時のつらい思いを珍しく口にしている。
「三振して上を向くのはつらいなあ」
ただ、改めて強い口調でこう言った。
「こういうときこそ、選手の価値が示されるものだと僕は思ってるんで、今までより気が緩むなんてことは僕にはあり得ない」
残り20試合。同じような考え方を持っている選手が、チームの中に何人いるのか。イチローの背を見つめる若手が多ければ多いほど、来季以降に期待できるということなのかもしれない。